2018年11月26日月曜日

常に『可能性』を探る、別々の人生を歩んできた2人が目指す未来とは…

川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は大辻孝則さん・早稲田緑さんをインタビューし、インタビューに参加した5名(久保田紗佑歌さん、小池悠介さん、齊藤美結さん、若林佐恵里さん、花輪佑樹さん)が記事を作りました。川上村のホームページには小池さんの記事を代表例として掲載しています。本記事では、久保田さんが作った記事を掲載します。

常に『可能性』を探る、別々の人生を歩んできた2人が目指す未来とは…


●なんで、こんなに男尊女卑なんだろう?

今回インタビューさせていただいた川上村の大辻孝則さんと早稲田緑さん。暮らしについて様々な可能性を探る2人は、例えば結婚については「事実婚」という選択されている。事実婚に至るまでには、早稲田緑さんの問題提起と追究心の積み重ねにありました。その思いが込められている言葉を頂きました。


早稲田緑さん。地域に必要なのは翻訳エンジンじゃない―。このままいったら自分の人生に投資できなくなる―。翻訳ツールなどを開発する会社を辞め、2013年から川上村高原地区に移住している、早稲田緑さん。移住当初は、地域おこし協力隊(集落支援員)として活動。現在は週4で働くフリーランスの形をとっている。個人、組織で実生活そのものに経営計画や働き方改革を自ら行う。ファシリテーターとしても活動中。

●伝統に苦しむ人が一人でも減ったほうがいい。

母からの『墓を継いでほしい』。
対する父は『どちらでもいい』。

もともと結婚願望がなかった、早稲田さんは

「なんで結婚するの―」
「それが【普通】ってのが、よく分からない。」

そして例を挙げてお話しくださりました。スペインでは名字をパートナー同士から好きなものを組み合わせていることから、

「そもそも名字を統一する意味とは?」

という疑問が生まれ、

「いらんくないか?」

となったそうです。しかし事実婚では、大辻孝則さんがみきと君の「法律上の」父親になれません。そこで早稲田さんは、

「彼(みきと君)の両親であることを認めてもらうために、結婚式を挙げた。」

最初は周りから

『なんで結婚しないの?』

と尋ねられることもあったそうですが、ほどなくして何も聞かれなくなったそう。大辻さんは事実婚に対しては

「不利益はない。名字が違うだけで意味ねーなって。 」(大辻さん)

「いつの時代もそうだと思う。ちょっとずつ、ちょっとずつ変化を加えてきたから続いている。革新を続けてきたから、伝統があると思う。」(早稲田さん)

「守らないと、守らないと…って守ることばっかりになっているとしんどい。その先に目的があるのに、守ることが目的になっている。」(大辻さん)

●コミュニティで培ってきたものを受け継いでいる、という感覚知。


川上村の良さを聞いてみたところ…

「おいしい水を、となったら外部から来る添加物(塩素など)が少ない。それがココの強み。」(大辻さん)

「川上村が好きというより、高原にピンポイントで住みたいなと思った。高原、いいな。条件を付けると、ココ(高原地区の一部)。ココじゃないと住めない。高原全体安心感がして、日々の暮らしが浮き出てくる。他の地域よりも強い人間臭さがある。<住み継ぐ>の一部になれてうれしい。水がおいしい、素材がいい、文明とのバランスがいい。自分の体がいい状態でいられる、快適とピュアのバランスの良いところ。」(早稲田さん)

現在大辻さん・早稲田さんらがお住まいになっているところは、大家さんの祖先からの知恵や知識、生活史を引き継ぐことのうれしさを語っていただきました。その例として挙げていただいたのは、

「夏は日差しを遮って涼しさを守るようになっており、冬は日光が部屋の中まで入り込み家全体が暖まるような工夫がなされている。」

これはまさに住まいを生き継いだ結果として今も残っていると言えるでしょう。

敷地内には耕されていない場所があるそうで、今後はその場所で作物を育てようと考えているそうです。そういった作物の育て方なども大家さんや周りの地域住民から知恵を頂くことが多いそう。

「文化も芸術もある、東京最高!でも毎日必要なモノじゃない。」(早稲田さん)

…早稲田さんは東京から移住されたと聞き、私はてっきり「東京は好きじゃないのかな?」とお話を聞く前に思っていたのですが、それは思い込みでした。

知らないうちに【都会と田舎】という地域での対比を思考の中に入れてしまっていました。

それだけでなく東京に生まれ育って21年の私も、東京の良さを見ようとして見ていなかったのみならず、『シティーだね』『めっちゃ都会だね』と出身と住んでいるところを評されて、嫌気がさしていた感情を東京の印象そのものをマイナスに転換してしまっていたことを気づかされました。聞かれるたびに、無意識にそうなっていたんですね。

●あって当然、想定外はない

2018年7月初旬に西日本で記録的豪雨があり、中国・四国地方で多くの世帯が床下浸水・床上浸水し、全壊や大規模半壊といった損害を受けました。中には、ガス・水道・電気が使用できなくなり、住まいそのものを町営住宅や仮設住宅へと移転しなければならない事態になり、未だにその状況が続いています。罹災証明や生活再建などが追い付いていない地域があります。川上村高原地区では、停電が数日間起こったそうです。

「何かに100%依存して生活することはできない。」と大辻さんは断言する。


大辻孝則さん。川上村生まれ、育ち。高校時代、大学生活前半を除き川上村で過ごす。大学生活後半からは、大阪の大学へ週4回3時間かけて通っていた。川上村役場に就職後は村内の水道インフラを担当し、現在は防災などを担当している。早稲田さんとは、川上村で長く続く和太鼓活動グループで知り合う。

「今は水道や電気が使えるのは普通だけど、『やーめた』って言われたら終わりじゃないですか。だから自分でもできるように維持しないといけない。この前の豪雨でガス・水道は問題なかったが、4日間電気が止まった。早く寝ればいいだけ。昼は平気だし、夜はろうそくで充分。」(大辻さん)

●家計は1つ、財布は別。

「家族を扶養するために働いているわけじゃない。対価を頂いているだけ。」
「常に自由でいられるためにお金をプールする。いつでも動けるようにしている。ローンを組みたくないし、家を買う気がないし、負債もない。ローンを払うためにリスクを負うこと自体幸せじゃない。(川上村に)こだわっているわけではないが、この先も(移動することは)あり得る。1,2年後どうしているか分からない。今のままが正解だと思っていないから、いなくなるかもしれない。」(早稲田さん)
  
月末に1回家計会議を欠かさず、常に自分たちを振り返る場を必ず日課ならぬ月課としているそう。きちんと時間を設けていることで、気持ちや考えの隔たりを分かり合う素敵な取り組みだと感じました。

●当たり前が、意外に。地元を再編集する。


「本当の対話がしたい。ここで暮らす中で嫌な思いは特にしていないが、世間話くらいしかできないことが苦痛だった。<世間話>より【自分】の話をもっとしたい人、ほかのコミュニティを求めている人はいる。それを川上村で作りたい。『自分が楽しい』と思えるような価値をこれからも創っていきたい。」(早稲田さん)

「ここは〇〇だからすごいというのはない。あっさりしている。しかし今まで自分が当たり前だと思っていたことが、村の外から来た人にとってはもっとすごいことだった。自分にとって水がきれいなのは、当たり前だった。しかし『(水を)生で飲むっていうのが、すごいんだよ』って村にいる人たちに伝えていくのが面白い。」 (大辻さん)

…自分自身との対話を常に心がけ、家族一体となり試行錯誤を重ね続ける姿勢と行動に驚かされるばかりでありました。【生活の本質と哲学】を追求し続ける、ある種の<貪欲さ>は、<誠実さ>と捉えることができるのではないでしょうか。そして、その過程に生じる<葛藤>を現実に昇華させようと、生活そのものへリアルに落とし込むことを目指しているように感じさせられます。

だからこそ大辻さんは生まれ育った川上村に戻り、地域に必要なことと本来の自分自身の在り方を追求する中で早稲田さんは、お互いに出会うことになったのではないかと思います。

今でこそライフラインや営みが整っていることが当たり前になってはいますが、時代とともに大切な<何か>が消滅していること自体、私たちは忘れてしまってはいないでしょうか。そして大事な信念を前例踏襲が故に四方へと垂れ流したまま、本来は望んでいないことを望むようになり、消耗してはいないでしょうか。

実はあなた自身の心の奥底にいるけれど、まだ眠り続けているだけかもしれません。まだ保留し続けている選択を、もう一度掘り起こしませんか。

私もそういう生活の理想を追い求めてみたいです。




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