2018年11月5日月曜日

心も体もあたたかく。 移住1年目の僕が移住20年の陶芸家・鈴木夫妻にきいた、村で暮らすということ。

川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は「いにま陶房」の鈴木雄一郎さん・智子さんをインタビューし、インタビューに参加した3名(冨羽一成さん、山口桃佳さん、山本英貴さん)が記事を作りました。川上村のホームページには山本さんの記事を代表例として掲載しています。本記事では、冨羽さんが作った記事を掲載します。

心も体もあたたかく。
移住1年目の僕が移住20年の陶芸家・鈴木夫妻にきいた、村で暮らすということ。

秋も一段と深まり、日が陰ればすこし肌寒ささえ覚える。この取材時、僕は川上村へ移住してきて約1ヶ月。この時まだ、僕の住む家にはまだ暖房器具がなかった。

 多くの人に口を揃えて「川上の冬は厳しいぞ」と教えられる。もちろん、移住するにあたって冬の厳しさはある程度理解していたつもりだが、10月中旬にして明け方は10度を下回り、身をもって「やばい」と感じている。そこで、川上村へ移住してきて20年を迎える陶芸家の鈴木夫妻に、冬を乗り越えるための知恵も含めて、お二人の暮らしや作家活動、考え方についてお話を聞かせていただいた。


●使い手の気持ちに寄り添う陶芸家

 夫の鈴木雄一郎さん(以降、雄一郎さん)、妻の智子さんは川上村内の「匠の聚」で陶芸家として活動している。「匠の聚」とは、芸術家の移住者が集うアートの里で、作品展示、販売、体験工房など、アートに身近に触れられる場所だ。鈴木夫妻は主に、食器などの作品を制作している。夫婦間で扱う素材や質感の違いはあるが、「使いやすさ」や「さりげない気遣い」を大切にした、使い手の気持ちに寄り添う作品づくりをしている。

食器のふちに“かえし”がついた作品。そっと親指を添えたくなるようなデザイン。
豆つぶなどを手を汚さず、最後の一粒まですくうことができる。

●体も心もあたたかく

 まずは冬の対策について聞いてみた。鈴木夫妻によれば、ファンヒーターが経済的、実用的にいちばんオススメとのこと。移住してきた当初は石油ストーブを使っていたが、あたたかいけど燃費が悪く、灯油代が高くついてしまったらしい。

 川上村の冬の寒さは「さむい」というより「痛い」。以前、豪雪地帯に住む友人が遊びに来た時、「こっち(川上村)の方が寒い」と言っていたのだという。北陸などの豪雪地帯は積もった雪が壁となり、風が体に当たることが少ない。それに比べて川上村は、雪が積もること自体は少ないが、冷たい風を遮るものがないため体の芯から冷える。

アトリエ内。たくさんの作品であふれている。下には寒さを
しのぐためのファンヒーターもある。

 智子さんは、寒さは体だけではなく、心までも陰鬱な気持ちになってしまうから早く寒さ対策をした方が良いと教えてくれた。智子さん自身、気分が落ち込んだ時は、心の電気をつけることを意識している。朝起きて気分がのらない時は、「ああ幸せ!」と口に出し、スイッチを入れ替える。自分自身が幸せでなければ、幸せを届けられる作品を作ることもできない。しかし、最初から気持ちの切り替えができていたわけではないという。

2階へと上がる階段には様々な作品がずらり。
それぞれにどんな「気遣い」が込められているのだろうか。

●試行錯誤で生まれる可能性

 移住してきてから2人とも落ち込んでいる時期もあった。移住当初は陶芸家としてやっていける見込みがあった訳ではなく、不安定な暮らしであった。貯金を切り崩し、とにかくお金を使わないように節制していたという。ひたすらアトリエに籠り、黙々と土と向かい合う日々だったという。

「人は追い込まれたときじゃないと、色々なことを考えない」と雄一郎さん。そういう時期があったからこそ生まれたものもある。全国各地の陶器市に出店し、まとめた量を売って生計を立て、百貨店の催事に出品するなど、地道に販路を広げた。また、当時インターネットが現在ほど普及していない中で、自分なりにWebサイトも作った。そんなある日、「クラフトフェアまつもと」の応募に通り、出店できたことが大きな転機となり、仕事の幅が広がった。


 また子どもにも恵まれ、少しずつ行動範囲がひろまっていった。そうすると、だんだん見える景色も変わり、地域とのつながりが広がると実感しているという。先日、僕が「川上村大運動会」に参加したとき、我が子を応援する「両親」としての鈴木夫婦の姿があった。

 現在、地域とのつながりを大切にし、一緒に作品を作り上げる喜びを感じてもらえるようなワークショップを行うなど、地域活動にも積極的に取り組まれている。

●暮らしを豊かにしていくには

 村で暮らしていく上で最も重要なことは、今自分のいる場所が一番だと思うことだと教えてもらった。「暮らす場所はどこでもよい。どこに住んでも不満は必ず出るものだから、ないものねだりをせず、あるもので考える。街にあって田舎にないものを考えても仕方がない」と雄一郎さん。

 住めば都というが、自分の意思次第で「都」になるということ。そうすることで、暮らしを豊かにするためのアイデアが自然と生まれてくるのではないか。僕自身もこれから村で暮らしていく上で、そんなことを大切にしていきたいと思う。

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