2018年1月19日金曜日

「山が人生の全て」川上村のレジェンド達っちゃん先生が語る、山から学ぶ生きる力とは?

川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は山の達人・辻谷達雄さんを取材し、取材に参加した3名(小田芳美さん、福井崇生さん、前田知里さん)が記事を作りました。川上村のホームページには小田さんの記事を代表例として掲載しています。本記事では、前田さんが作った記事を掲載します。

「山が人生の全て」
川上村のレジェンド達っちゃん先生が語る、山から学ぶ生きる力とは?

みなさんは、人生をかけてやりたいことはありますか?人生の選択肢が多い現代、何をなすべきか悩む方も多いのではないでしょうか。昔は、職業を選ぶ自由も選択肢もありませんでした。

そんな中、置かれた厳しい状況の中で常に新しい発想で山とかかわって来た「達っちゃん」こと、川上村のレジェンド、辻谷達雄さんにお話を伺って来ました。


山の仕事しか選択肢がなかった

川上村で生まれ育ち、村から出たことはないという辻谷さんは、15歳の時から林業に携わっていました。戦後、木材需要が減り、次第に林業は衰退していきます。仕事を求め若者は村から姿を消しました。村には長男しか残らないことが多かったそう。それでも、95%が森林で囲まれた川上村には林業以外の産業が少なく、山と関わる他に生きる選択肢がなかったといいます。


伐採ではなく山の循環が生まれる仕事を作りたかった

川上村の山はほとんどが民有林で、山を所有する「山持ち」は村外に住んでいることが多く、山持ちのかわりに山を手入れする「山守」がいて、その下で働く人がいる。辻谷さんは長年、山守の元で仕事をしていました。しかし間伐の売り上げで維持費が賄えなくなった今、林業を支えたシステムは崩壊の一途をたどり、放置されている民有林も目立つようになりました。

「人工林は管理しないと崩壊してしまう。木を切る仕事より、山を育てる仕事がしたかった」と辻谷さん。

林業と言えば、木を切ることが仕事の1つですが、辻谷さんが特にテーマとしてきたことは、苗木を育てて山を造ることと、山から出てくる木を扱うこと。

1976年、ヤマツ産業という法人を立ち上げました。当時は、山の仕事を会社にするというのは画期的なことでした。

ヤマツ産業では村外にも仕事を求め、電車の線路に危険をおよぼす木を伐採するような仕事もしているといいます。常に新しい視点で山とかかわりながら生きる道を探してきました。

人生の学校 達っちゃんクラブ

65歳になったとき、辻谷さんは会社を息子さんに譲り、次世代を担う子どもたちに森のことや自然の中で生きる力を教える「達っちゃんクラブ」を始めました。アマゴを穫ったり、食べること、生活のことはじめ色んなことを体験を通して伝えたり、村内にある匠の聚には栗やリンゴなどいろんな樹種を植え、四季の移ろいをじかに感じ、収穫もできる達っちゃんクラブの森も作りました。

「田舎の良さを都会の人に知ってほしかった。都会では自分の病気にさえ気づかない人がいる。でも山に来たら治ると思う。」と、たっちゃん。リピーターも多く、120人の定員に対して100人くらいの応募があることも。20年間で約8300人の参加者があったといいます。人気の達っちゃんクラブの企画はほぼ全て、辻谷さん自身が考えていました。年間6回開催していて、この2月が最後の授業になります。

「子どもたちは学校も塾もあって忙しい。でも、学校を出てからが人生。生きる力を教えてくれたのは山。本では学べないことがある。年齢的にも限界で今年をファイナルとしたけれど、だれか継いでほしい。」と人生の後輩へのメッセージ。



川上村のこれからのこと

しんどくても、ファンの「また来たい」という言葉を励みに頑張って来たという辻谷さん。


やりたいことはやってきたので悔いはないとのことですが、これからやってみたいことを聞くと、中学生の頃からつけているという日記をみせてくれました。今年で75冊目になる「当用日記」をまとめ、もう1冊何か本を書きたいそう。そして、すでに村内のホテルで語り部も頼まれていて、若い人が知らない川上村の話を語り継ぎたいと話してくれました。


常に新しい発想と実践を重ね、人生のすべてを山にかけてきた辻谷さん。絶えず、笑顔で力強くお話される辻谷さんのパワフルな生き方がとても印象的でした。

「夢と希望は捨てたらあかん。いくつになっても捨ててはいけない。」

生きる力を、あきらめずに最後までやり抜く力を伝えて来た達っちゃん先生最後の授業、「手作り味噌づくり教室」は2月10日に予定されています。

人生に迷われたら一度、達っちゃん先生を訪ねてみてはいかがでしょうか。川上村の大自然と山が、自分の中にある生きる力に気づかせてくれるかもしれません。

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