2019年1月24日木曜日

人口約1300人の村役場。 都会の役場とはちょっと違う、利害を超えた「村民と役場」の関係とは。

川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は川上村役場で働く森本倫巨(ともみ)さん、鈴木健太さんをインタビューし、インタビューに参加した2名(山本ひろとさん、冨羽一成さん)が記事を作りました。川上村のホームページには山本さんの記事を代表例として掲載しています。本記事では、冨羽さんが作った記事を掲載します。

人口約1300人の村役場。
都会の役場とはちょっと違う、利害を超えた「村民と役場」の関係とは。

みなさんは、”地方公務員”にどのようなイメージをお持ちだろうか。ネット上では様々な意見があがっているが、一概に言うことはできないのかもしれない。

 今回は川上村役場で働く、定住促進課の森本さん、地域振興課の鈴木さんにインタビューを行った。


 森本さんは、本庁勤務5年目。川上村出身で、村内で道ゆく人の顔を見れば、「あの人ね」と大体わかるのだという。主に、空き家バンクなど、移住者の受け入れ支援の担当をしている。休日出勤はあるが、仕事を成し遂げた時の達成感は大きいという。私は川上村に移住してきたばかりだが、我が家を紹介してくださったのも森本さんだ。


 鈴木さんは、新規卒業者で今年度から川上村役場で勤めている。出身は大阪で、高校までを大阪で過ごし、大学時代は広島で過ごした。子供の頃から、毎年お盆になると川上村の祖母の家で一週間ほど過ごしていたという。広島県内でも内定していた企業があったが、村での思い出や、祖母の住んでいた家が残っていたこともあり、村で暮らすことを決めた。農業委員会の事務局、有害鳥獣の駆除に関わる仕事を担当。村の観光・物産イベント事業のスタッフをすることもある。有害鳥獣の駆除業務の1つに、駆除された獣の尻尾と、提出された写真の照合作業があるそうで、最初は戸惑いもあったが、今では慣れてしまったのだという。


●川上村は「不便」なのか

 村の95%が森林であり、マップアプリで川上村を空から見ればほとんどが緑である。ゆえに「不便そう」「なにもなさそう」と思われがちだが、実際のところはどうなのだろうか。
 もちろん、自然を求めて村へ移住されている方もいるわけだが、ライフスタイル自体は都会と全く違うわけではない。鈴木さんもまた、川上村へ来る前は不便さを心配していたが、実際には色々な支援もあり、不自由さを感じることは少ないという。


●アットホームな役場

 川上村役場には、都会の役場のような「案内所」がない。その代わり、役場へ入れば課の分け隔てなく誰かが声をかけてくれる。時には、副村長から背中をポンとたたかれて「川上での暮らしは慣れたか?」と親身に話していただける、アットホームな場所だ。

 そんなアットホームな雰囲気は、役場を訪れる人にだけではなく、職員同士にも広がっている。森本さんは、プライベートのことも含め色んな相談に乗ってもらえる職場だという。役場職員は全員で60人ほどであるため、職員同士の距離も近い。そのため、一人一人の仕事に対する責任も大きくなるという。


 そんなアットホームさゆえか、入庁早々の4月、鈴木さんはホテル杉の湯での記念事業のプレゼンを任されたのだという。本番直前、あまりの緊張で鼻血が出てしまったそうだが、それが話のいいネタとなり場が和んだと、笑いながら話してくれた。

●これからの川上村のためにできること

 お二人とも、役場職員は住民に寄り添うことが一番大切だと話していた。しかし人口減少は続いており、村の認知度も決して高いとは言えず、課題も多い。そこでお二人に、これからの川上村のためにできることについて伺った。

 そこで森本さんは、「◯◯×空き家のリノベーション」ができたらと考えているそうだ。多くの空き家が川上村内にはあるが、耐震性などの問題を抱えていて、改修が必要な状態の空き家が多いという。

DIYに興味がある人や村内の木工作家などとコラボし、改修と同時に空き家の価値をより高め、移住の促進につなげることはできないか。また、空き家のリノベーションを通して生まれた新しい繋がりが、関係人口を増やすことにもなるではないだろうか。


 鈴木さんは、例えば「テクノロジーを利用した観光PR」はできないかと話す。バーチャル体験のできる「VR」など最新技術を使い、豊かな自然を五感で感じてもらう。より遠い場所に住む人たちに「川上村」を知ってもらい、観光で川上村を訪れるきっかけにできないかという。

 こういった提案をする機会は都会の役場職員にもあると思うが、小さな役場の方が実行に移しやすいのではないか。簡単に実現するものではないが、職員のモチベーションを高く保つきっかけにもなる。


●村民を支える役場、役場を支える村民

 村民は気さくな人が多く、お祭りなど村民主体のイベントには多くの人たちが参加する。また役場との距離感も近く、互いの情報が伝わるのも早い。各集落がかかえる課題が見えやすく、役場の仕事がスムーズに進むこともあるという。

 昨年の台風で、一週間近く停電になった集落があった。夏場であったため、冷蔵庫の中身もダメになり、多くの人が苦しい境遇で一週間を過ごした。村長が集落を訪問すると、その地域の人から「電気が通らないくらいどうってことない」という言葉をかけてもらったそうだ。そのことを聞いた役場職員は驚いたという。村民同士で知恵を出し合い、自分たちで出来る限りのことをする姿に、職員も救われたのだという。

 村民を支えるのは役場の仕事。しかし、決して一方的ではなく、村民も自然と役場を支える。誰かが意識的にやっているわけではない、自然と互いを支え合う関係こそが、これからの川上村を支える大きな力になるのではないだろうか。

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